「部長って大変ですよね。仕事で結果を出さないといけないし、私みたいな部下の面倒も見ないといけないし」
「…まあ、楽ではないかな」
きっかけはこんな話からだった。
彼女の労りの言葉に軽く同調するように返す。そして彼女の次の発言に私は意表を突かれた。
「だからSMでストレス発散ですか?」
「えっ…?」
「週末のSMプレイで週明け辛そうにしてるのかなって思ってましたけど、違うんですか?」
「そんなわけないだろう!」
食事の始めは仕事の話をしていただけに油断していたけれど、やはり彼女は私の秘密を暴こうとしていると悟った。
咄嗟に否定するも彼女は意味ありげに微笑む。
「でも手首にも時々縄痕つけてたじゃないですか」
「…っ!」
そう言われてはっとした。確かにSM倶楽部で手首を縛られてしばらく縄痕が残ってしまった事は何度かあった。
けれどまさか、そんなところを見られているとは思わず、返す言葉も見つからなかった。これでは肯定してしまったも同然だ。
けれど彼女の意図がわからなかった。私の秘密を暴いてどうしたいのか。脅すつもりででもいるのだろうかと身構えた。
けれど彼女は意外な言葉を口にした。
「私も好きなんです、SM」
「試してみます?」
その表情は会社では見た事のない嗜虐的な笑みだった。マゾヒストの私がこんな表情をされて断れるはずがなかった。
「縄痕つけて会社に来るくらいなんだから勝手は分かるでしょう?早く今の貴方に相応しい格好になってくださいね、部長」
ホテルの部屋に入るなり、早速命令が始まった。口調こそまだ丁寧ではあったけれど、その声色とセリフに私の被虐欲は掻き立てられた。
私は命令に従う形で一糸まとわぬ姿となった。その様子をソファに座りながら見ていた彼女は、全裸で次の指示を待つ私に向かって自分で考えるよう促した。
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