「ホワイトデーのお礼をしようかな」
ヒナさんはそう言って全裸で仰向けになった僕の体にホイップクリームを絞り始めました。
まさかこんな形でホワイトデーのお返しをもらえるなんて…予想外の嬉しい展開に僕の胸も股間も高鳴ったのでした。
ヒナさんと知り合ったのはホワイトデーの二週間ほど前の事。痴女の集まるコミュニティサイトで気に入ってもらえたのがきっかけでした。
“拘束されて玩具にされるのが好きなんだ?”
“感じやすいの?カワイイ!”
“私もちょうど玩具にされて歓ぶ年上のM男を探してたの”
こんな風に言ってもらい、会う事になったのがホワイトデーだったのです。
ちなみに僕は42歳、ヒナさんは31歳です。
初対面がホワイトデーになったのはたまたまでしたが、折角ならもっと気に入ってもらいたいという下心もあり、ホワイトデーにかこつけて初対面のその日はちょっといいレストランを予約し、スイーツのプレゼントを用意しました。
待ち合わせにやってきたヒナさんはスレンダーで大人の色気を感じさせる美人な女性でした。それだけに僕のテンションもますます上がります。
予約していたレストランに着くと、僕は用意していたプレゼントを手渡しました。
「今日はホワイトデーなので、気持ち程度ですがどうぞ」
「えー?いいの?ありがとう!」
甘い物が好きだというヒナさんに喜んでもらえてホッとする僕。心なしかヒナさんの雰囲気もより明るく、フレンドリー
になったような気がしました。
そうして2時間ほど話をしながら食事をした僕達。そろそろ店を出ようかという頃、僕はそわそわしながら切り出しました。
「この後どうしましょうか?」
「うーん…ちょっと寄りたい所があるから行ってもいい?」
「えっ?ああ、はい」
初対面の日はとりあえず食事だけでもという事でその後の予定は決めていませんでした。気乗りしてもらえなければこのまま解散という可能性もあったのですが、ヒナさんの反応はそれとは違うもので、僕は期待してしまいます。
寄りたい所というと2件目かホテルか…どちらにしても進展の可能性はありそうだ、と胸が弾みます。
でももしかしてぼったくりバーみたいな所へ連れて行かれたら…?いやいや、ヒナさんはそんな人じゃない…でももし万が一の事があったら…もし、怪しい雰囲気の場所へ向かうようならノーだけは言えるようにしよう。
なんて事を考えながらヒナさんに先導されて歩く事15分。着いたのは街中にあるスーパーマーケットでした。
「スーパーですか?」
「うん、ちょっと買いたいものがあるの」
予想もしていなかった場所に僕は拍子抜けです。ヒナさんが店内に入り、手に取ったのはホイップクリーム。ピンク色のパッケージで“しぼるだけ”と書いてありました。
「ホイップクリームですか?」
「うん」
「ケーキでも作るんですか?」
「うーん…ふふふ」
なぜホイップクリーム?と思いました。ホイップと言えば思いつくのはケーキ。さっきは甘い物が好きだと喜んでくれたし、ケーキ作りでもするのだろうか?と純粋に疑問に思った事を訊いたのですが、ヒナさんは意味深に笑います。
この時の僕はそのヒナさんの反応の意味がよく分かりませんでした。けれど数十分後には理解する事となるのです。
「じゃあ行こっか」
「えっ?あっ、はい」
スーパーでの買い物を済ませるとヒナさんは歩みを早めました。てっきり買い物に付き合わされただけでこのまま解散になるのだろうか、と少し落ち込みつつヒナさんの後を追います。
解散なら待ち合わせた駅に向かうだろうと思っていたものの、ヒナさんは駅とは違う方向へ…
「ここでいい?」
「えっ?」
「期待してたんでしょう?」
「えっ…あっ…まぁ…」
「じゃあいいよね」
辿り着いたのはホテル街。ヒナさんはその中の一つを指差しました。半ば諦めていた僕にとってはまさかの流れに落ち込んでいた気分も一気に晴れました。