“なあ、お前の胸って何か女子みたいじゃね?”
きっかけは高校2年生の時、同級生男子のこの言葉でした。
体育の授業で着替える時に僕の胸に膨らみがあるという事でこんな風に指摘されたのです。
自分でも少し胸が出ているかなという自覚はありましたが、女子みたいに服の上からでも丸みがわかる程ではなかったし、デブの男子だって女子のおっぱいみたいな奴もいたのでそれまでさほど気にしていませんでした。
けれど僕は159cmのチビで体型もどちらかというとやせ形。後になって知ったのですが、僕に胸は女性化乳房というもので、全身脂肪のデブ男子のそれとは全く違うものでした。
僕の胸が女子みたいだと指摘されてから、クラスの男子がこぞって揉ませろとやってきます。やっている方は面白半分でイジっている感覚だと思いますが、やられている方は不快でしかありませんでした。
けれどそんな日々は数日で終わりました。同じクラスの女子3人組が止めに入ってくれたのです。
彼女達はクラスのリーダー格的な存在。言ってみればスクールカーストで上位の立場にいるような女子です。
僕もそうですが、僕の胸イジリをしてくる男子はカーストでいうと中間くらい。逆らうと露骨なイジメまではないものの、自然とハブられ下位に落ち、居心地の悪い思いをするので、空気が読める奴ならわざわざたてつくような事はありません。
女子に守られるなんて格好悪くはありましたが、彼女達のおかげで僕は男子達からの胸イジリはピタッとおさまりました。
けれど、ここから僕の女装生活が始まったのです。
男子達からの胸イジリが収まってから一週間ほど経った頃。僕を助けてくれた女子3人組から声をかけられました。
“今週末空いてたら一緒に遊ぼうよ”
びっくりしました。同じクラスではありましたが、リア充を絵に描いたような彼女達とごく普通のいち生徒である僕とでは接点などなく、遊びに誘われるどころか普通に話した事もほとんどありません。
実を言うと先日の件でもなぜ僕を助けてくれたのかさえ分からずにいたくらいでした。
けれど断る理由もないし、助けてもらったという恩もあるので僕は不思議に思いながらも彼女達の誘いに応えました。
その週の日曜日、待ち合わせて連れて行かれたのはカラオケボックス。歌でも歌うのかなと思っていたのですが、3人のうちの一人が取り出したのはメイクセットでした。そしてそれで僕に化粧をし始めたのです。
もちろん最初は抵抗しましたが、いいから黙って、という言葉で従ってしまうのは、カーストでの立場の差ゆえ。僕はファンデーションを塗られ、アイメイクをされ、つけまつげを着けられリップを塗られてと、なすがままになってしまいました。
2,30分ほどで化粧は完成したようでした。でもまだこれでは終わりません。今度は服を脱いでと言われたのです。やっぱり戸惑いましたが、彼女達には逆らえません。僕は言われるがまま上半身裸になりました。
“わー!ホントに女の子みたいなおっぱいだね!”
僕の胸を見て彼女達は大興奮。僕は恥ずかしさしかありません。すると今度はブラジャーが出てきました。サイズが合うといいんだけど、と言いながら僕の胸に着けます。
なんと本当にピッタリでした。胸周りは少し窮屈さを感じましたが、ブラジャーを着けると胸がさらに大きくなって少し谷間も出来るほど。
自分は女子ほど胸はないと思っていたけれど、それはブラジャーを着けていなかったからであって、ブラジャーを着けると女子と変わらない程胸があったのだと、この時自覚し、さらに恥ずかしさを感じました。
ブラを着けられたら今度は女性ものの服を着せられます。ズボンも脱がされてスカートまで穿かされてしまいました。
そして最後にウィッグを被せられ、出来たよ!と。
鏡で自分の姿を見せられて驚愕しました。そこには完全に女子になった僕がいたのです。
“わー!メッチャ可愛くなったよ!!”
“でしょ?前から似合いそうな気がしてたんだよねー”
女子達が僕の女装姿を見て盛り上がります。正直情けなさや屈辱しかありませんでした。
僕は男です。カッコイイとちやほやされるなら嬉しいけれど可愛いと言われても嬉しくありません。
そんな僕の心情をよそに彼女達は僕の写真まで撮り始めました。
そんな時、女子の一人が思いがけない事を口にします。
“これならこのまま外に出ても男だってバレないね!”
その言葉に残りの二人が即賛同。僕は従うしかありません。僕はカラオケボックスの外へ連れ出され、女装姿のまま彼女達のショッピングに付き合う事になりました。
本当にやめてほしい…これならまだ男子達に胸イジリをされている方がマシだったとさえ思いました。