童貞のまま20歳を迎えた時、僕は絶望しました。
でも23歳の今、僕が幸せを噛みしめているのは、他でもない約1年前に運命の出会いを果たした女王様、綾乃さんのおかげです。
僕の人生設計では高校生で彼女を作って童貞を捨てるつもりでいました。
けれどどちらかというと陰キャだった僕。同じような雰囲気の男子としかつるめず、気軽に女子と話をしている陽キャな同級生を羨ましく眺める事しかできない日々でした。
そんな僕に当然彼女なんて出来るはずもなく、高校卒業を迎えます。
けれどまだ大学生活がある…!高校生活では燻った日々を送っていたけれど、大学生になれば校則もないし自由にオシャレもできる、モテ男子に変身できれば彼女だってできるはずだ、せめて20歳までには彼女を作って童貞を卒業したい…!と意気込み、髪を染めたり雑誌を参考にファッションに気を遣ったりもしました。
その結果、女子から普通に話しかけられるようになったのです。
これなら彼女も出来る!と思ったのも束の間、決定的なウィークポイントに気付きました。
今までまともに女子と話した事がないので、何をどう話せばいいのか分からなかったのです。
聞かれた事には答えられる。でもそこから話を広げる事が出来ない。女子を前にすると会話が続かず沈黙が流れる。
こんな状態で彼女など出来るはずもなく、結局童貞のまま20歳の誕生日を迎えてしまったわけです。
僕は絶望のあまり自暴自棄になってしまいました。このままずっと彼女が出来なくても仕方ない、もうどうでもいい、と思うようになってしまいました。
でもその根底には自分のような境遇の男は他にもいるといった妙な安心感もあったのだと思います。
けれどこんな自分の意識が変わったのはそれから1年と少し経った頃でした。高校から仲が良く、大学も同じだった友人に彼女が出来たのです。僕と仲が良いくらいなので、彼もまた陰キャ。なのに彼女が出来た。これには相当焦りました。自分の様な境遇の男は他にもいると、身近な友人を当てはめて安心していた事にこの時気付いたのです。
このまま本当に自暴自棄になって何も行動に移さず諦めたらきっと25歳になっても童貞、30歳になっても童貞、一生童貞だと悟りました。
それは嫌だ!!
それまで僕は同級生に女子がたくさんいるんだから自然な成り行きで付き合えるだろうなんて生ぬるい考えがありましたが、それを改めて、自ら出会いを探しに行く決心をしました。
そこで利用したのがマッチングサイトです。当時は今ほど主流ではなかったものの、身近な女の子と出会えるという話を聞いていたので、早速利用する事にしました。
“20歳の童貞です、彼女が欲しいです”
“童貞でも付き合ってくれる人”
“童貞じゃだめですか?”
結果は全滅でした。本当に誰にも全く相手にされません。それでもめげずに自分から女性にアプローチもしましたが、基本的には反応ナシ。返ってきても辛辣な言葉ばかりでした。
“キモい”
“無理”
“童貞とかw”
心が折れそうでしたが、この時何故か同時に妙な興奮を覚えました。
そしてこの頃から、女子達に童貞なのをバカにされて罵倒される妄想をしてオナニーをするようになりました。
バカにされるって興奮する。
と自覚してからは出会い目的よりもバカにされたくて、女の子にアプローチしまくりました。やっぱり基本的には無視されるのですが、何割かの罵倒返信に歓びを覚えました。
けれどこの遊びはすぐに飽きてしまいました。罵倒されるといってもその文言は大体決まっています。同じような罵倒ばかりで物足りなくなってしまったのです。
それに出来れば目の前で罵倒されたいという欲もあります。
もっと本格的に罵倒されたい。
と思う頃には自分はMかもしれないと自覚もしていました。
普通の女子じゃなくて、S系の女子ならMで童貞な僕でも受け入れてもらえるかもしれない。と、僕はS系の女子にターゲットを絞ってアピールしました。
“童貞だけどS女子の性奴隷になりたいです”
“童貞の僕をイジメてください!”
“20歳の童貞、何でもします!”
今度こそ…!と思いましたが、結果はイマイチでした。反応は増えたものの、
“シコって寝てろ”
“童貞のくせに何が出来るの?”
と、まともに相手にしてもらえそうにはありませんでした。
結局童貞も卒業できず、罵倒されて興奮してしまうというこじれたスキルを身に着けただけで、女性とは無縁の一生を送る事になるのか…と二度目の絶望を感じていた時でした。
“童貞好きの30歳、女子って年齢じゃないけど相手するわよ”
とメッセージが届いたのです。
神が現れたと思いました。女性だから女神といった方がいいかもしれません。
“よろしくお願いします!”
僕は即、返信しました。
これまで、ただ罵倒のレスポンスしか返ってこなかった僕に前向きなメッセージが届くなんて。天にも昇る思いでした。
しかも、さらに嬉しい展開が続きます。条件さえ納得できるなら会おうというお誘いまでいただいたのです。