「おい!このド変態!!テメェ今、私のスカートの中覗いただろ!!」
そう罵られるや否や、僕は階段から蹴り転がされパンプスで顔面を踏みつけられた。
そう…これこそ僕が望んでいた状況…!!
僕は顔面に靴底の感触を味わいながら歓喜に打ち震えた。
僕は10代の頃から女性に踏みつけられたりボコボコにされたいという願望があった。
何か特別な経緯があったわけではないけれど、たまたま漫画で男が女の子に殴られるシーンを見て興奮したのがキッカケと言えるかもしれない。
僕はそれ以来、強い女性から殴る蹴るの暴行を受ける妄想をしながらオナニーをするようになった。
けれどそのうち妄想だけでは物足りなくなってくるのは当然の流れ。僕はどうしたら実際に女性に暴力を振るってもらえるだろうか考えるようになった。
女の子に悪態を吐く、悪戯を仕掛ける、意味なく勝負を挑む。
当時、高校生だった僕は漫画で見たシチュエーションを真似てクラスの女子相手に実践してみたけれど結果は散々なものだった。
暴力という形で応戦してくる女の子など皆無で基本は無視。中には仕返しどころか泣き出す子が出てきて、女子だけでなく男子からも顰蹙を買うように。
おかげで僕の高校生活は“ぼっち”となった。
高校時代の苦い経験からしばらくは自身の性癖を封印した。といっても妄想だけは止める事が出来なかったけれど。
僕が再び性癖を解禁したのは20代前半の事。
たまたま見かけたSNSの書き込みが発端だった。
“男をボコボコにしたい”
この言葉に僕の中の被虐心が反応した。
漫画だけじゃなかった!やっぱりこういうタイプの女性は実在するんだ!という喜びでいっぱいになった。
早速コンタクトを取ってみる。けれど思ったようなレスポンスは得られなかった。
けれど、男をボコボコにする事を楽しむ女性が実在するというだけで僕にとっては収穫があった。
この日から、僕は積極的に自身の性癖を満たしてくれる女性を探すようになった。
長い妄想生活の賜でこの頃には好みのシチュエーションも完全に定まっていた。
目の前をミニスカート姿の女性が歩いている。僕はほんの出来心で持っていた手鏡でスカートの中を覗いた。
ところが僕の悪行が女性にバレてしまい、罵倒の上ボコボコに…
こんな妄想を再現してくれる女性が理想。僕は自身の願望を添えて興味を持ってもらえそうな女性へ手当たり次第メッセージを送った。
SNSで目当ての女性を探し始めて気付いた事があった。
それは男を虐げたい願望を持つ女性は意外と多いという事。
自分の妄想は所詮漫画をはじめとしたフィクションの世界だと思っていた僕にとっては思ってもない発見だった。
こんな事ならもっと早くSNSで探しておけばよかった。もし高校時代に気付いていればぼっち生活を送らずに済んだかもしれない。
そんな事も頭を過ぎったけれど、今更悔やんでも仕方がない。
僕はとにかく目の前にあるチャンスに注力した。
その甲斐あってか僕の妄想に興味を持ってくれる女性が見つかった。
条件は手加減はしないけれど抵抗するな。お礼として食事を奢れ。当然スカートを覗く以上の性的行為は一切なし。
僕としても特に異存はない。交渉成立という事で数日後、僕達は会う事になった。